Matthias BöckelによるPixabayからの画像
前回のビタミン&ミネラルからずいぶん時間が経ってしまいました。
前回はこちら→ ビタミン&ミネラル1
遅まきながら、ビタミン&ミネラル2でございます。
今回はビタミンC、D、Eです。なんとなくお馴染みな顔ぶれですよね。
ビタミンC
ペットフードの栄養の基準と言えば最初に出てくるのはAAFCOですね。
米国資料検査官協会 The Association of American Feed Control Officialsの頭文字を取ってAAFCOと呼ばれています。
ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定している団体で、日本のペットフード構成取引協会もAAFCOの基準を採用しています。
(ヨーロッパのEC加盟国ではFEDIAFという団体の基準が採用されています。)
このAAFCOが定めている栄養基準にはビタミンCの基準を定めた項目がありません。
その理由は犬も猫も体内でビタミンCを生成することができるので、食品から摂る必要がないから。
ですから原材料一覧の最後にズラッと並んでいるビタミン類にビタミンCが含まれていないフードも少なくありません。
またビタミンC(アスコルビン酸)が使われていても、それは栄養補給のためではなく酸化防止剤としてという場合もあります。
しかし研究が進み、犬や猫も精神的なストレス(病院、ペットホテルなど)を感じた時にはビタミンCの生成量が急速に減少することがわかっています。また体調を崩した時、激しい運動の後など身体的なストレスの後には血中のビタミンC濃度が低くなることもわかっています。
ビタミンCはコラーゲンの生成に関わっており、コラーゲンは丈夫で健康な関節、腱、筋肉を作るために必要です。
またビタミンCは代表的な抗酸化物質です。(前述した通り酸化防止剤として使用されるくらい)食品や体内の酸化(酸素が関与する有害な反応)を抑制する作用を持っているということです。
このような理由で、いわゆるプレミアムフードと呼ばれるタイプのフードではビタミンCが栄養補給のための食品添加物として配合されていたり、ビタミンC補給の目的での原材料が使われている場合もあります。(ローズヒップなど)
フードに添加されているビタミンCは、L-アスコルビン酸またはアスコルビン酸と表示されている場合もあります。
フードにビタミンCが添加されていても、激しい運動や通院の後などはビタミンCの豊富な食材をちょこっと与えるのは動物にとってメリットがあります。ふかしたサツマイモや生の果物、軽くサッと湯通ししたカリフラワーなどはビタミンC補給に最適です。(糖分の摂りすぎにならないよう量には注意)
ビタミンCをサプリメントで与えるのはあまりお勧めしません。ビタミンCのサプリメントは含有量が多くお腹が緩くなる場合が多いからです。病気の治療にビタミンCサプリを集中的に使う場合がありますが、これはもちろん獣医師が行うことです。基本的には体内で生成できるので、補給には食品が良いと思います。
ビタミンD
ビタミンCとは反対に、人間は日光を浴びると皮膚でビタミンD前駆体が生成され肝臓と腎臓で活性化されます。犬や猫の皮膚にはこの能力がありません。ですからビタミンDは必ず食事から摂取しなくてはなりません。
ペットフードの原料では、レバー、魚肉、魚油がビタミンDを含むものです。これら原材料の他に、ほとんどのフードにビタミンDはサプリメントで配合されています。
ビタミンDはカルシウムおよびリンの吸収を促進し尿中への排泄を減少させます。いくらカルシウムを摂取してもビタミンDが足りないと血中カルシウムが不足して、帳尻を合わせるためにカルシウムが骨から溶け出して血中濃度を保ちます。こうなると骨は脆くなり危険です。
ビタミンDは脂溶性ビタミンで体内に蓄積するので欠乏症は起こりにくいのですが、過剰摂取は問題になります。水溶性のビタミンB群やビタミンCと違って過剰分が尿中に排泄されることがないからです。
通常ペットフードに含まれている量では過剰摂取になることはありません。
過剰摂取と言えば、たいへん特殊な例ですが2019年に複数のメーカーのフードにビタミンDが過剰混入していたことによるリコール騒動がありました。
この件について当時書いたのがこちら
この件ではヒルズに対する集団訴訟が起き、同社は最終的に約13億円の賠償金で和解しています。
上記の件は飼い主の責任ではありませんがビタミンと言えど過剰摂取の恐ろしさを示しています。
人間用のビタミンDサプリメント、処方薬の乾癬治療用軟膏(ビタミンDを多く含む)などは犬や猫が誤飲しないよう取り扱いにはくれぐれも注意しましょう。
ビタミンE
ビタミンEはナッツ類や植物油に多く含まれています。ペットフードではヒマワリ油やオリーブ油が使われている場合、ビタミンEの摂取が期待できます。
ビタミンEとして作用する物質はトコフェロールと言い、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタの4種類があります。ナッツなど食品から精製されたビタミンEにはこの4つが全て含まれているためミックストコフェロールと呼ばれます。
ミックストコフェロール、お馴染みの名前ですね。ペットフードの原材料一覧の最後のほうに「酸化防止剤(ミックストコフェロール)」と書かれているのをよく見かけますが、あれはビタミンEです。
このようにほとんどのペットフードには酸化防止剤としてビタミンEが添加されているので、ビタミン類一覧のところにはビタミンEの名前がない場合が多いです。サプリメントとしてビタミンEが添加される場合はアルファトコフェロールという名で表記されています。トコフェロールの中で最も抗酸化作用が高いのがこのアルファαです。
酸化防止剤になるくらいですから、ビタミンEは摂取した後に体内の脂質の酸化を防止するという働きを持っています。不足すると免疫系の異常や神経障害を引き起こすことがあります。
ペットフードを与えている場合は不足することはありませんが、手作りで「油控えめ」を心がけていると決定的に不足しやすいビタミンなのでご注意ください。
ビタミンEはビタミンAやDと同様に脂溶性ビタミンなのですが、便といっしょに排出されるためAやDと違って蓄積されにくく、通常の食事を摂っている場合には過剰症になることはまずありません。
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ビタミンについてAからEまで書きました。次はミネラル類について書いていく予定。