ペットフードの原材料一覧のラスト辺りにバーッと並ぶ難解な名前の物質たち。あれらのほとんどはビタミンとミネラル類です。今回は3回目、ミネラルを取り上げます。
ミネラルって何?
そもそもミネラルって何なのでしょうか?
自然界に100種類以上存在する金属元素がミネラルです。そのうちの16種類が、人間や動物が食物から摂取しなくてはならないものです。
ミネラルとは、体を構成する「酸素、炭素、水素、窒素」の主要4元素以外のものの総称です。また「糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル」の5大栄養素のひとつでもあります。
ミネラルは歯や骨格を作るだけでなく、体内の水分や酸のバランスを保ったり、神経の伝達、筋肉の収縮、酵素の構成成分となるなど、身体中で重要な役割を担っています。ミネラルは命を維持するために絶対に必要な栄養だというわけです。
それぞれのミネラルは、お互いに働きかけ合ってバランスを取りながら代謝を行なっています。特定のミネラルだけが長期的に不足したり、また反対に特定のミネラルだけを長期的に摂り過ぎたりすると、お互いに働きかけ合うバランスが崩れてしまいます。
身体が必要とするミネラルのバランスはライフステージによっても変わります。特に骨格や筋肉がどんどん大きくなる乳幼児期〜成長期のミネラルバランスは非常に重要です。子犬や子猫には専用のフードを与えるのが理想的な理由のひとつです。
ペットフードに含まれるミネラル
哺乳類に必要な必須ミネラルは16種類と考えられていますが、AAFCOがペットフードに含まれていなくてはならない量を定めているミネラルは次の12種類です。
- カルシウム
- リン
- カリウム
- ナトリウム
- 塩素
- マグネシウム
- 鉄
- 銅
- マンガン
- 亜鉛
- ヨウ素
- セレン
青い文字のミネラルは常量元素またはマクロミネラルと呼ばれ、体内での含有量も摂取する必要量も多いものです。
赤い文字のミネラルは微量元素またはミクロミネラルと呼ばれ、必要量がごく少量のものです。
ビタミンの項目でも書きましたが、ペットフードに添加されるミネラル類はあらかじめ正しい配合でミックスされたものがペットフードメーカーに納品されます。あらかじめ混合されたものが添加されることで、必要な栄養素がペットフードの粒に均等に行き渡ります。
ではそれぞれのミネラルについて、役割や知っておきたいポイントをあげていきます。
・筋肉の収縮
・血管の収縮と拡張
・ホルモンの分泌
・血液凝固促進
・骨と歯の構造成分
カルシウムと言えば骨や歯というイメージですが、それ以外にも重要な役割を担っています。例えば上に挙げた「筋肉の収縮」、ここには心臓などの内臓の筋肉も含まれますから、血液中のカルシウムが不足すると生命を維持することができません。
つまり血液中のカルシウムは絶対に不足させるわけにはいかないので、食事から摂るカルシウムが不足すると、自分の骨を破壊してでも血中カルシウム量は維持されます。(骨が犠牲になった状態が骨粗しょう症です。骨粗しょう症は犬にも猫にも起こります。)血液検査をしてもカルシウムが不足しているかどうかがわからないのはこのためです。
こんなに重要なミネラルなのですが、ペットフードの原材料一覧にはカルシウムと記載されていないことがあります。食材としての原材料で骨付きの肉や丸ごとの魚を使用している場合などがそれにあたります。
(でもたまにカルシウム源となりそうなものが書かれていないのにカルシウム添加の表示がない場合があります。ドッグフード原材料シリーズで「なぜだ?」と書くことがあるのはこんな場合。そういう場合でも総合栄養食と記載されているので、多分原材料一覧の書き方の詰めが甘いのだと思います。小規模なメーカーでは起こりがちです。)
・乳酸カルシウム
リン
・DNA、RNA、細胞膜のリン脂質に含まれる
・身体が適切に機能するためのエネルギー代謝
リンはカルシウムやマグネシウムと結合して骨や歯を構成しています。骨の強度にはリンとカルシウムの割合が重要で、リン:カルシウムは1:1〜1:2に保つ必要があります。
リンは肉や魚、卵などに多く含まれるので不足することはあまりありません。ペットフードの場合はチキンミールやフィッシュミールに含まれる骨にもリンが多く含まれます。そのため原材料一覧に「リン」という表記を見ることはほぼありません。(たまに骨粉を原料にしたリン酸カルシウムを使っているフードがあるので「ほぼ」と書きました。)
食物から摂ったリンは上記のような役割を果たし、余った分は尿中に排泄されます。リンの排泄や再吸収のために働くのは腎臓ですが、腎臓の機能が低下すると不要なリンを排泄することができなくなります。腎機能が低下した犬や猫のフードが低リン処方になっているのはこのためです。
マグネシウム
・細胞の浸透圧を調整し一定に保つ
・神経の情報伝達
・筋肉の収縮
・神経の情報伝達
・栄養素の吸収や輸送
銅のはたらき
・酵素の構成成分
・全ての体細胞に存在する抗酸化物質であるグルタチオンペルオキシターゼの必須成分
以上がペットフードに含まれていなくてはならないミネラル類についての簡単な説明です。ドッグフード原材料シリーズでは書ききれない部分の補足だと考えてください。
【参考URL】
https://www.petfoodinstitute.org/blog/a-to-z-of-pet-food-minerals/
https://petcurean.com/en-us/vitamin-mineral-supplementation-in-pet-food
https://www.hillspet.com/pet-care/nutrition-feeding/minerals?lightboxfired=true#