2022年9月22日木曜日

いろいろ知っておきたいフィッシュミールのこと

Image by Mostafa Elturkey from Pixabay 


ペットフードの原材料で肉類のミールに次いで登場回数の多いものと言えば、フィッシュミールです。魚粉と表記されている場合もありますが同じものです。

肉類のミールの項目で書いたように、ミールというのは「挽いたり潰したりして細かくした食べ物」という意味があります。魚を挽いたり潰したりして細かくしたフィッシュミールの製法からお話ししていきます。

Fishmeal powder 
Phu Thinh Co, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

フィッシュミールの製法

フィッシュミールの場合も製法は肉類のミールとほとんど変わりません。粉砕した魚を蒸して水分を飛ばした後に圧搾して油分を取り除きます。次にこの油分を搾った魚を巨大なドラムのような釜に入れてぐるぐる回転させながら加熱します。水分10%の水準まで乾燥させて粉状に挽いたものがフィッシュミールです。見た目は上の画像のようになります。

肉類のミールもそうですが、この工程はペットフードメーカーが行っているのではありません。飼料用やペットフード用のミールを専門に作る会社があり、巨大な工場で一括して生産されます。ミールはペットフードメーカーとは別のところで作られているというのは添加物の表示などを考える際にポイントとなる大事な点です。ペットフードの原材料一覧に表記される添加物はペットフードメーカーが添加するものだけだからです。

フィッシュミールの原料

フィッシュミールの原料となる魚は非常に多岐に渡ります。最も多いのは人間の食用には小さすぎたり骨が多すぎたりする天然捕獲の海洋魚を丸ごと使うものです。イワシ、メンハーデンフィッシュ、ニシンなどが主なもので、これらはフィッシュミールを製造するためだけに捕獲されます。人間が食べるための魚は捕獲だけでなく養殖の割合も高いですが、飼料や肥料のためのフィッシュミールはそのほとんどを捕獲に頼っています。
そして割合は低いですが、缶詰工場や鮮魚の処理場から出る魚のアラや内臓がフィッシュミールに加工されることもあります。海洋資源の有効利用という点で良いことだと思います。

フィッシュミールと酸化防止剤

フィッシュミールは脂肪酸を多く含むため非常に酸化しやすいという性質があります。酸化したフィッシュミールは発熱し、倉庫や船荷として大量に保管や運送をする際に発熱すると火災や爆発を引き起こすおそれもあります。
そのためフィッシュミールには酸化防止剤の添加が義務付けられています。アメリカの場合フィッシュミールに使う酸化防止剤はエトキシキンまたはBHTまたはミックストコフェロールと定められています。
アメリカ以外の国の規制がちょっとわからないのですが、そう大きくは変わらないと思います。食品添加物の規制が厳しいEUでもフィッシュミールには酸化による自然発火防止のためにエトキシキンが使用されています。日本も同様です。

フィッシュミールに使われる酸化防止剤で最も多いのはエトキシキンです。ペットフードの解説などで「避けたい食品添加物」の筆頭としてあげられるのはエトキシキンですが、フィッシュミールに多く使われる理由は酸化防止の効果の高さと価格の安さです。
エトキシキンと同じく合成酸化防止剤であるBHTは効果がやや弱く、さらに価格がエトキシキンの4〜5倍です。
ミックストコフェロールは天然由来の酸化防止剤ですが、効果はさらに弱くなり価格はエトキシキンの20〜25倍です。
海上輸送中の発火防止という理由を考えると、フィッシュミールのエトキシキン使用は致し方ないとも言えます。
なおフィッシュミールの時点で添加された食品添加物はペットフードの原材料一覧には表記されません。原材料一覧には書かれていないけれどペットフードに含まれるものです。

食品や飼料にエトキシキンが使用される場合、もちろん安全とされる規定のラインが守られています。しかしフィッシュミールの生産者もエトキシキンに対して安全性の調査が繰り返し行われていることから、規定が変更になるリスクを負っています。そのため近年はエトキシキンの使用量を可能な限り減らしたり、天然由来の酸化防止剤に切り替える業者も増えています。
これはフィッシュミールの生産プロセスの進歩によって製造時により多くの脂肪分を分離できるようになったためです。製品の脂肪分が少なくなれば酸化のリスクも低くなります。

フィッシュミールにはエトキシキンが使われている可能性が高いですよ!と言いたいわけではなくて、このようにさまざまな理由から完全にシャットアウトするのは難しいことを知っておいた方が良いと思うのです。
知っておくと「ある程度は体に入ってしまうから、解毒器官である肝臓や腎臓をいたわる策を考えよう」とか「これ以上合成添加物を摂取しないよう、原材料一覧に合成酸化防止剤が含まれるものは避けよう」と対策が立てられます。
対策した上で、ある程度はおおらかな気持ちでいることもまた大切です。


フィッシュミールの栄養

フィッシュミールも肉類のミールと同じく水分と油分を取り除いているのでタンパク質がギュッと凝縮して含まれています。重量当たりのタンパク質含有量が高いということです。フィッシュミールの粗タンパク質は60〜65%です。生の魚は重量のうち約75%が水分で残りの部分がタンパク質その他ですから、フィッシュミールがタンパク質源として効率が良いことがわかります。

しかしこれも肉類のミールと同じように、高温での加工時にタンパク質の構成要素であるアミノ酸が一部変性したり失われたりしています。ペットフードの原材料一覧を見てフィッシュミールの他に肉や魚が含まれているか、メチオニンやリシンなどアミノ酸が別途添加されているかどうかを確認することが大切です。

魚から摂取できる栄養と言えばオメガ3脂肪酸のDHAやEPAもまた重要なものです。オメガ3脂肪酸は体内で合成できないため必ず食事から摂取しなくてはいけない必須脂肪酸です。しかし上の酸化防止剤の項目で書いたように、近年のフィッシュミールは油分を可能な限り分離しています。また高温で加工する際には分解されてしまいます。ですからフィッシュミールはオメガ3脂肪酸の摂取源にはなりません。




ここまで書いてきたように、ペットフードの原材料としてのフィッシュミールには長所もあれば短所もあります。どちらも知っておくと「どの製品を買う?」「トッピングなどした方がいい?」などの判断をすることが簡単になります。いろいろと面倒くさくて悩ましいですが、愛する犬たち猫たちのためにフードの原材料のことを知っていきましょう。



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